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018 「アルミ電線は危ない?」(2015年2月号)

銅の高騰により、60年代後半から70年代後半にかけてアルミ導線が北米住宅の配線に使われるようになりました が、アルミ導線による電気事故が多発し、住宅の配線に使われなくなりました。アルミ導線のために火災保険が高い、保険をかけてくれない、家が売れない。そ んな悩みもよく耳にします。

何故、アルミ導線は危険だと言われるのでしょうか。

アルミ導線自体に危険性は無いのですが、不適切な施工方法は次第に導線同士、コンセント、スイッチ、照明器具の接続部分に劣化、ショート、接続不良の問題を起こします。

1. 熱膨張率の違い
アルミは銅より熱膨張率が高く、銅の膨張係数にあわせて生産されていた製品の接続部分のねじ頭が小さすぎたり、外れやすくなることがあります。

2. アルミの変形
アルミは銅に比べ、変形しやすく熱にも弱いのです。一度変形するとアルミは元に戻らなくなります。そのため、接続部分で小さな隙間ができてしまい、接触が悪くなります。

3. 電気腐食
異なる金属を接触させると電気が発生します。電池などはこの現象を利用しているのです。銅や真鍮はアルミと相性が悪く、銅とアルミを接続するとアルミが腐食してしまいます。

4. アルミの錆
アルミは錆びないと言われますが、正確には酸化し続けないと言った方がよいでしょう。アルミの表面が酸化すると保護膜となるアルミナ層ができます。この物質は絶縁体にも使われる電導性の低い物質なので、アルミ線表面のアルミナ層は抵抗を高め、電気が通りにくくなります。

施工当時に問題なかった接続部分の抵抗が徐々に上がるために、接続部分が発熱し、さらに抵抗が上がり、導線や絶縁体の劣化、絶縁体の溶解、有毒ガスの発生、発煙や発火の原因になります。

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<ピッグテール工法>

導線をすべて換えなければならないほどの状況はめったに聞きませんし、アルミ導線専用の接続部品を使い、カナダ電気工事規定で定められているピッグテールという施工法を専業者にしてもらえば多くの問題は解消できます。

ピッグテールとは導線同士の接続部分にもう一本銅線を接続して、それをコンセント、スイッチ、照明器具に接 続するといった工法で、接続を確実にする工法です。さらに、規定で新築住居のコンセントは Tamper Resistant (いたずら防止)タイプが定められています。プラスチックの劣化が進み、差込がゆるくなっている古いコンセントやスイッチをそのまま使い続けるより、より 安全で新しい製品に取り替えるべきです。

全てのアルミ導線が使われなくなったかというと、そうではありません。鉄、銅、銀、金など、あらゆる金属はその特性を生かして電気回路に使われています。アルミ導線は比較的高い電導性、軽さ、形状のつけやすさから、今でも問題なく使われているのです。