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035 「人に優しいデザイン2」(2016年7月号)

挿入方向がわかりやすく、ロックできるカードのデザイン例

挿入方向がわかりやすく、ロックできるカードのデザイン例

あなたはクレジットカードやバスの乗り継ぎ券を逆に挿入した事はありませんか。電気コードや USBのプラグを反対に差し込もうとした事はありませんか。蛇口を締めようとして逆に回した事はありませんか。もしあったとしても、あなたのせいではありません。

ユニバーサルデザインは、とかく身障者のためのバリアフリーデザインと思われがちですが、それだけではありません。
クレジットカードやバスパスなどは見ただけで方向がわかる様にデザインしておけば親切です。クレジットカードはチップ読み込み中は取り出せませんから Do Not Removeと表示されます。なぜ最初から抜こうとしても抜けない様にデザインしておかないんでしょうか。USBプラグだって、抜いてはいけない時は抜けない様にしておけば良い。

グラウンド(アース)付きのプラグなら方向性は一目瞭然ですが、そうでないプラグは一方が太く、逆さまには入らない様になっています。でも見た目わかりにくいです。USBのプラグも紛らわしいです。どちらも上になる側に目立つ印を付けておくか、色を変えておけば簡単に解決です。

道路に駐車するとき気を付けなければならないのが、消火栓、サイドウォーク(交差点の縁石のコーナーではないのでご注意を)、レーンからの距離です。それぞれ 6m、6m、1.5m以上と決まっています。でも一体何人の人が巻尺を携帯しているでしょうか。駐車して欲しくない部分は縁石に印をしておけば良いのに…。

日本、韓国、中国のほか、ベトナム、ハンガリーでも苗字・名前の順に書くそうです。その方が並べ替え整理もしやすく賢明と思えます。北米でも公式の書式には苗字から書きますから、その方が便利と気づいてはいるのでしょう。住所も番地から書くのはやはり不合理です。大きなところから順に絞って行く日本のやり方は合理的です。日付も厄介です。レシートに 090612とあっても一体いつの事やら。これも日本式に年月日の順に統一すれば整理しやすくなります。コンピューター内なら自動的に日付順に並べてくれ、手間要らずです。

カセットプレーヤーの出現は画期的でした。オランダのP社が開発し、ライバル会社にも無償で規格をシェアし、▶は再生、▶▶は早送り、◼︎は停止と統一されていました。誰でも文字を読むことなく簡単に操作でき、どのメーカーのテープでも使え、ステレオのテープでもモノーラルのプレーヤーで聞けました。これがユニバーサルデザインの真髄です。

各企業が互いに競争し、独自の技術開発をしなければならないことは避けられない宿命ですが、製品の使い勝手が違うと、それは消費者に不便をかけます。長大な取説も必要になるでしょう。一旦競争を止め、規格の世界統一を図るために膝を付き合わせる必要があります。企業にとっても、世界がある規格に傾いて行った時に取り残されないで済むので、大きなメリットになります。

ユニバーサルデザインとは、どの人にも優しいデザインという意味です。悩む時間が減る分、より楽しい人生が過ごせるわけです。
おことわり:意見には個人差があります