記事・出版物 Articles & Publications リストへ戻る

040 「人気のリクレームドウッド(古材)のちょっとしたお話」 (2016年12月号)

私が個人的にとても気に入っているフローリング会社が取り扱っている製品の一つに、“ハートパイン” という樹種を使用した床材があります。

このハートパインとは、100年以上前にアメリカ国内の倉庫や工場の建築で使用されていた材木で、特に長いスパンを飛ばさなければならない場合に適していました。その後、それら古い建物の解体に伴い廃材となった梁材、柱材はリクレームウッドとしてよみがえり再利用されるようになりました。パインといってもおそらく伐採されてから100年から120年以上の長い時を経て自然に乾燥している為、その強度とオーク材並みの硬度、そしてその独特の風合いでフローリング材としては最適な製品の一つとなっています。ただ価格的には他の床材と比較して高価になってしまうという点もあります。

ここBC州内にもリクレームウッドを専門に取り扱う業者が何社かあります。カナダ東部や中部からホワイトオークの古材を仕入れたり、地元のBC州では、ダグラスファー、ヘムロック、レッドシダー等の材木を使用した古いレンガ積みのビル、農場のサイロ、畜産舎、小屋等を丁寧に解体し、木材の梁、柱、垂木、床板、天井板、外壁等を一本ずつ、一枚ずつ細かく回収します。その後専門業者のヤードにて金属探知機を使用して古材に残った釘、ボルト、ねじ等の金属を全て取り除き製品化していきます。

最近話題になった例としては、バンクバーダウンタウンに 長年、“W” のネオン看板を上げていたWoodward buildingが1903年に建築され、2006年に解体されましたが、ここからも大量のリクレーム材が出ました。

今では考えられませんが70年から80年前は、工場や倉庫の外壁材としてオーク材の板が多く使用されていました。その外壁が長い年月に渡り風雨や紫外線にさらされ、自然な経年変化による独特な表面の凹凸感や、シルバーグレー色のアン ティーク感を醸し出した古材となって、今では商業店舗や展示場等、現代の洗練されたインテリアとして再利用されています。身近なところでは、コキットラムのIKEAのデイスプレイの壁、ここにも古材が使用されていましたね。新しいデザインのインテリア家具とリクレームウッドの雰囲気が旨く融合していました。

当社の取引先のリクレーム材専門業者の社長のお宅は、4000スクエアフィートの豪邸ですが、自宅を建築する際に使用した古材の量は、なんと建築に必要な全材木量の40%に上るそうです。建築の際にはもちろんリクレーム材の特性を存分に駆使し、社長ご本人と友人の大工さんの二人で五年の歳月をかけ昨年完成させたそうです。

現代では、紙、プラスチック、金属等、色々なリサイクルがありますが、木材のリサイクルも決して見逃すことはできません。再利用の仕方によって、100 年を越える寿命をその材に与えることができます。