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062「シックハウスから守る住まいへの対策」(2018年10月号)

住まいへの憧れは誰しもが人生設計の中に描くものです。しかし、その住まいの室内環境は果たして快適で健康な空間なのでしょうか。

「アメリカで最も深刻な環境衛生問題は室内空気汚染」(US Environmental Protection Agency)「50%の病気は室内空気汚染が起因、あるいは悪化の要因」(American College 専門医)と指摘されています。同時に統計によると「室内で過ごす時間は人生の約90%」そして「室内の空気質は屋外と比べると25~100倍汚染している」と室内空気質への関心は意識せざるを得ません。近年、省エネ住宅の普及と共に建物は気密性が増し空気汚染への可能性は高まっています。

室内空気汚染をもたらす要因は大きく分けて3つに分類されます。1.屋外から室内へ侵入する排気ガス、ラドンガス、埃、花粉、悪臭 2.室内で放出される建材、家具からの有害ガス、家庭で使用される化学薬品からの有害化学物質やガス燃焼器具からの一酸化、二酸化炭素、窒素 3.室内で発生するカビ、植物菌、ダニ、湿気などです。

皆様の家庭で空気汚染による症状を持つ人は居ないと思いますが、この問題を解決するには前記1,2,3の汚染源を室内で発生させないように建物の性能を上げる事、そして適切な計画換気を行うことです。安全で快適に健康で住める住宅には優れた気密、断熱、防水、防露、防風、防蟻、すべての要素を満たす性能技術が不可欠です。

また、冬の寒い時期に窓を開けて換気をすることは大変勇気がいると同時に暖房負荷の上昇に伴いエネルギーコストの負担が加わります。省エネで汚染空気を排除する適切な計画換気システムが必要になります。換気システムには3つのタイプがあります。1.一般家屋の浴室やトイレで見られる集中排気システム、2.普及が低い集中給気システム、3.バンクーバー市が新築において義務化している熱(あるいは全熱)交換型給排気システムです。計画換気システムの目的は屋外から新鮮な空気を室内へ給気し、同時に汚れた室内の空気を屋外へ排気することです。熱交換型換気システムの特徴は1.各室内の温度差を軽減 2.熱交換により違和感の無い新鮮な空気を室内へ供給できる 3. 室内の汚れた空気を排気 4.冷暖房経費の節約 5.外部からの騒音を軽減するなどがあげられます。イニシャルコストに捕らわれず省エネ、サステイナビリティーなどの長期的利点を考慮して選択すべきです。そして大切な事は快適で健康な室内環境を創ることです。

新築、リノベーションを計画されている方々には室内空気質の理解を深めて頂きたく、建友会では日系連絡協議会所属の協会から共催、協賛を受けて11月下旬に「健康で快適な室内環境の作り方」セミナーを開催する予定です。多くのスライドを活用したセミナーとパネルディスカッションを行う計画ですので、多くの参加者をお待ち申し上げます。