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036 「知っておいた方がいい電磁波の話(1)」(2016年8月号)
By 吉武 政治 (Matthew Yoshitake), Cascadia Ecohomes Ltd.
「電磁波」ってご存知でしょうか?なんとなく想像できるのは、電子レンジやIHストーブ、携帯電話やスマートメーターなどから発生する、ちょっと怖いものという印象でしょうか?ここではごく身近な家庭にある電磁波についてお話しします。
電磁波は大きく低周波と高周波に分かれます。前述の電子レンジやIHストーブのような家電製品から発生する周波数の低いものが低周波で、携帯電話やスマートメーターから発生する周波数の高い(メガヘルツ・ギガヘルツ)が高周波です。高周波は一般に「電波」とも呼ばれコードレス電話や無線LAN、携帯電話などごく身近にあるものなので、現代社会で生活する以上それらを完全に避けるのは困難でしょう。強いて注意するなら、携帯電話を枕元で充電しないとか、通話するときは短めにして極力スピーカーかイヤフォンを使う、パソコンはWifiをやめて有線にするなどの対策があります。これら高周波と低周波の大きな違いは前者が目的を持って意図的に飛ばしているのに対して、後者は電気を使用することによる副産物として発生する、いわゆる百害あって一利もないものということです。
ちょっと話は変わりますがシックハウスというのを聞かれたことがあると思います。新築の家などで建材や塗料、家具の接着剤などから発生する化学物質が原因で体調を崩すことが報告されています。(余談ですが住宅だけでなく新車の匂い、あれもほとんど化学物質です。暑い日に車内に放置された子供が死亡するという悲惨な事故がありますが、暑さによる脱水症状以前に、化学物質を大量に吸引して死亡するケースも多いと聞いています。)
化学物質が身体に与える影響には個人差があります。そして化学物質過敏症の人がいるように、あまり知られてはいませんが「電磁波過敏症」というのがあります。電磁波は目に見えず匂いもないのでそれがもしかしたら、倦怠感、頭痛、不眠、冷え性、肌荒れ、発疹、アトピーなどの原因になっているかもしれないなど、知る由もありません。ご存知のとおり私たちの身体は微細な電気の流れで生命活動を維持しています。そこに人工的な電気の副産物である「電磁波」が現れて、身体を突き抜けたり帯電したりしたらどうなるでしょう?影響が全くないと考える方がちょっと無理がありそうです。
先進国の電気使用量はこの50年間で約10倍に増えています。電気使用量が増えているということはその分電磁波も増えているということです。しかも今注目されているIoT(Internet of Things) など、電磁波は爆発的に増える傾向にあります。このように電気は現代社会に欠かせないものであると同時に、それらが身体に与える影響についてはまだわかってないことがたくさんあり、電力会社など否定的な面はなかなか認めないという現状もあります。
世界には電磁波の安全基準というものがあります。これに従って対策を行い、電気とうまく付き合っていくことが大切です。次回はその対策について考えてみます。
吉武政治 2級電磁波測定士(日本)