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043「安全・安心な住宅を求めて」(2017年3月号 )
By 伊藤 公久 (Kimi Ito), K. Ito & Associates
人間が生活を送るには衣食住は欠かせない条件です。経済成長と共にその条件 を満たすための質と量に大きな変化が生まれてきています。そもそも家本来の 目的はあらゆる過酷な自然環境から人の命を守るために作られてきたはずです。しかし、時代の流れと共に質へのこだわりが求められるようになってきました。では、求められる住宅の質とは何なのかを探ってみたいと思います。
今、生活されているお住まいは安全で安心できる家でしょうか?住まいを求める時、何を基準として住宅を選ばれますか?
これから既存住宅を購入したいと思っている、あるいは住宅のリノベーション、又は新築を計画されている皆様方へ参考になればと住宅の要素に付いてお話をしてみます。
まず、家づくりの基本構想は大きく分けて6つの要素から成り立っていると思います。
- デザイン性:消費者にとっては最も気になるところです。そして建築家が最も力を入れる外観やインテリアの意匠設計です。個性を生かしこだわりのある住まいつくりが始まります。
- 機能性:家族構成は様々です。そして生活スタイルも変わります。その変化の中で生活しやすい最適な空間レイアウト。カジュアルな交流の場を担ったキッチンカフェーや高齢者に優しいバリアフリーを取り入れた住まいつくり。
- 安全性、耐久性:掛け替えの無い人の命を守るための重要な要素です。構造的安全性を恒久的に維持するには耐久性の高い建物であることが必要条件です。構造設計が適切でも耐久性のない建物は安全性が劣化します。建物の経年変化を最小限に抑える優れた建築技術が有れば安全性も維持されます。
- 快適性、健康維持:室内環境をバランスよく整えること。屋内を一定の温度と湿度に保つ事により冬温かく夏涼しく快適に過ごすことができます。人生の 90%を室内で過ごし、1 日平均約20Kg(約 6 畳間)の空気を呼吸すると言われています。より新鮮な空気を呼吸することで健康維持を図ることです。室内の空気質は全熱交換換気システムを導入することにより常に新鮮な空気を室内に供給することができます。
- 省エネルギー・環境共生:気候変動をもたらす地球温暖化現象の抑制策として CO2 の削減は欠かせません。住宅消費エネルギーを削減することにより地球環境への貢献にも役立ちます。また、省エネルギー化を進めることにより建物の安全性と耐久性が高まります。
- 経済性:初期コストだけに捕われず長期的コストを考慮することで経済性の認識が変わります。例えば減価償却期間を長くする高耐久な家。メンテナンスや修理費の軽減。省エネ化により消費エネルギー費の削減。また、金銭的数値では表せない健康性、快適性の向上による総合的経済性です。
常に自然環境と向き合っているビルディングエンベロープ(外皮:屋内と屋外を境にする部位)の状態を理解し、適切な設計と施工技術を活かすことにより、安全で安心できる住まいつくりが生まれるのです。