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048「建築写真の撮り方1(スマホ編)」(2017年8月号)

By 野元 千恵(Chie Nomoto), 写真家

昔からカメラを趣味にされる方はたくさんいますが、最近はスマートフォン(以下スマホ)などの影響でより多くの人が気軽に写真を撮る機会が増えてきました。「写真」といっても、様々なカテゴリーの写真撮影があります。写真家をしていると、よく「どんな写真を撮るのですか?」と聞かれることがあります。私の場合はカテゴリーを特定しておりませんが、中には「建築写真だけ」や「人物写真だけ」と、特定の被写体だけを撮影する写真家の方々もいらっしゃいます。

その中でも、今回は「建築写真」についてお話したいと思います。そもそも建築写真とは、その名の通り、主に建物が被写体となる写真のことです。建築写真は、対象が物体なので簡単かと思われるかもしれませんが、実は人物写真のように誰でもすぐに撮れるものではありません。建築写真は様々なポイントを押さえる必要があります。
 
■建築写真を撮る上での基本ポイント

fraser-08_02建築写真を撮る際、まず必要なことは「縦横の線を写真に合わせて垂直にする」ということです(写真参照)。特に、被写体である建物の柱、壁のコーナー、窓枠などの縦の線が写真の縦に対して平行でないと、軸が曲がった写真になります。また、正面からではなく、角度をつけた(斜め方向から)撮影された写真は、三面入っていた方が、より空間を把握できるので良いとされています。三面のうち左右のどちらかの面を全体の 1/5ほど入れると、空間がより広く見えます。もし、カメラにズーム機能などがある場合は、なるべく広角(広い範囲を撮る)で撮影し、横長で撮影することをお勧めします(高層ビルなどの縦長の被写体を除く)。
 
■スマホやデジタルカメラを使っての撮影の場合

カメラの知識はあまりないけれど、建築写真を撮ってみたい方、スマホもしくはお持ちのデジタルカメラ(どのようなタイプでも可)で挑戦してみましょう。基本的に先ほどの基本である「縦横の線を写真に合わせて垂直にする」を守れば、どのようなカメラで撮影しても、建築写真として成立すると思います。
 
■スマホに付属している HDR 機能(中級編)

最近のスマホには、はじめから HDR 機能というものが付いていることも多々あります。これは、ハイダイナミックレンジ合成のことで、1枚の写真の中に非常に強い明暗がある場合有効な機能で、カメラが複数の写真を自動的に撮影し、合成して明暗を弱くしてくれる機能です。私たちの眼は自動的に明暗を弱くして全体が見えるように調整していますが、物体のあるがままを写し出す写真は、明暗を調整する必要があるのです。
 
写真を「撮る」こと自体は誰でも可能だと思います。ですが、より良い写真にするために、より自分の眼で見た姿を写すことにこだわる、そこでできることがたくさんあります。だから写真は多くの人を魅了するのだと思います。皆さんも自宅や素敵な建築などに出会った時に是非ご自身のこだわりを基本を交えて撮影してみてはいかがでしょうか。