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053「建築写真の撮り方3(応用編)」(2018年1月号)
By 野元 千恵(Chie Nomoto), 写真家
前回(ふれいざー10月号)は、写真を撮る際の基本になる3つの要素の話をしました。今回は前回までの要素を踏まえて、建築写真を撮る応用編です。
- 垂直に撮る大切さ
初級編でもお伝えした通り、建築写真を撮る上で、撮影対象である建築物を水平になる様に撮影することはとても重要です。最近のデジカメには「グリッド」といって、ファインダーあるいはスクリーンを通して被写体をみる時に、縦横のガイド線が見える様になっているカメラも多くありますので、この線を利用して、ファインダーあるいはスクリーン上に写っている被写体の建物の直線の部分を、このガイド線と平行になる様に合わせます。特に、写真の中心は縦横ともに垂直である必要があります。そうでないと、ぱっと見ただけでもどこか歪んだ写真に見えます。
- 明暗のコントラストが強い場合の撮影
天気の良い青空の日は一般的に外観撮影に最適だと思われる方が多く、私の撮影案件でも天気予報を見て撮影日を決めることがあります。青空と建物の美しいカラーコントラストは得られますが、直射日光により、明暗のコントラストが強く表れてしまうことが多々あります。影が強くなり、その暗い場所に明るい部分を合わせてしまうと、さらに元々明るい部分が明るくなりすぎたり、白くなってしまうことがあります。この現象を軽減できるのがHDR(ハイダイナミックレンジ)という撮影方法で、従来に比べてより広い明るさの幅(ダイナミックレンジ)を表現できる表示技術です。
- HDR撮影の仕方
HDR撮影は、カメラをオートブランケットという設定にし、三脚を使用する必要があります。これは、一度シャッターボタンを押したら、自動的にシャッタスピードを変えて、明るさの異なる3枚の写真が続けて撮影できる設定です。撮影した写真をパソコンに取り込み、専用のソフトでこの3枚を合成することで、暗過ぎる部分は明るい写真を使用し、明る過ぎる部分は暗い写真を使用した、全体的に暗過ぎず、明る過ぎない写真を作ることができます。
ちなみに、編集の段階であまり不自然に加工しすぎてしまうと、絵に描いたような合成写真のような写真になってしまうので注意が必要です。HDR写真の合成後は、コントラスト具合など、自分のイメージの写真に近づけるよう、調整が必要となってきます。
建築写真にご興味がある方はぜひ試してみてください。