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021 「テーブルと椅子の選び方」(2015年5月号)
By 駒場 好夫 (Takao Komaba), F Size Furniture Ltd.
皆さんは家具を買う時、何を基準に選ばれていますか?
サイズや色、デザイン、機能、値段など優先順位は人それぞれであるにしろ、皆さん吟味して選ばれていることでしょう。今回は、どこのご家庭でも使用されている、ダイニングテーブルと椅子の選び方について少しお話ししたいと思います。
毎日食事をとるダイニングテーブルと椅子は、家の中にある家具の中でも特に“使いやすさ”が重要になってき ます。「差尺」と言う言葉をご存知でしょうか?テーブルトップの高さと、椅子の座面の高さの差を指す言葉なのですが、この差尺が使いやすさに大きく関わっ てきます。部屋の大きさに対してのテーブルトップの大きさももちろん重要ですが(これは皆さん当然チェックされていることでしょう)テーブルと椅子がセッ トで売られている場合、家具デザイナーはこの事に対して特に注意してデザインをしています。
これは私の主観ですが、食生活のスタイルによっても差尺が違って当然だと思っています。主にフォークやナイフを 使って、プレートに盛られた食事をするのと、右手にお箸、左手にお茶碗を持ってご飯を食べるのとでも差尺は違うはずですので、自分たち家族に合った差尺の 物を探してみてはどうでしょう。
ここで疑問が出てくると思います。「家族のみんなの身長差によって差尺が違うのでは?」
成長途中の子供達には座面の高さを調節できる椅子がありますが、大人の場合、脚を切ったり、足したりして差尺を調整すれば簡単かもしれません。しかし、全部の椅子の座面の高さが違うのもチョット変かも?
話がそれるかもしれませんが、テーブルや椅子の高さは家具メーカーによって様々です。それぞれの国によっ て、国民の平均身長から高さを割り出していますが、近年平均身長が伸びてきたせいか、座面の高さが高くなってきています。ショップやショールームでは脚の 長い椅子がスマートで格好よく見え、靴を履いたまま腰かけて「あっ、いい感じ」と購入される方が多いそうです。でも、ちょっと待ってください。家に持ち 帰って実際に使う時に靴は?ここはカナダですので、家の中でも靴を履いたままという方もいらっしゃるかもしれませんが、このコラムを読んでいる方のお宅は いかがでしょうか。大半の方は家の中では靴を脱いで生活していらっしゃるのでは? デザイナーとしては売れる家具をデザインしないといけないのかもしれませんが…。
話を戻しますが、差尺を調整する方法は他にもあります。座面の上に座布団のような物の厚みで高さを調節して あげれば、かなり違う使い心地になるはずです。ここで一つ注意しないといけないのは足元です。足が床から浮いている状態で長い時間座り続けると、大腿部の 裏側が圧迫され血流が悪くなり、膝下が冷えるといった症状が現れてしまいます。そのような時は、読まなくなった雑誌や電話帳、あるいは踏み台など何でも構 いませんので、足をのせてしっかりとかかとが付いている事をご確認ください。
新しいダイニングセットを購入する機会がありましたら、そんな事を少し思い出しながら選んでみてください。