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019 「米ヒバのこと」(2015年3月号)
By 和田 健治 (Kenji Wada), P.J. Trading Inc.
ここ数日、今回のコラムに何を書かせて頂こうか、と悩んでおりました。頭の中にあることは、1ヵ月後に迫る、ある プロジェクト。それをそのまま書かせて頂くことにしました。ある伐採業者から、製材と販売を委託されておりまして、どうしたら利益が得られるか、頭を悩ま せています。
Yellow Cedar、別名サイプレス。日本では、『米ヒバ』と呼ばれているこの木が今日の主役です。
BC州の沿岸部を中心に生息するこの木は、永年、日本の材木屋さんたちを魅了してきました。しかしながら、 BC州で一般向けに製材品が売られているのを見たことがありません。米ヒバのカナダ国内での消費量はほとんどゼロと言って良いと思います(ボートのパドル や祭祀用のお面などには使われるそうですが、数字には表れてこないでしょうから)。実は、ほぼ全量が日本での消費に充てられていると思われます。耐候性、 耐水性、また防虫にも強い力を発揮するために、日本では、古くから水回りの部材や建物の土台として、あるいは神社仏閣の構造材にも使われてきました。成長 が非常に遅く、従って目は詰まっていて強度の面でも優れています。
『優れもの』にも関わらず、なぜ日本でしか使われないのか?通説ですが、その理由は、米ヒバの臭いが北米では受け 入れられない、ということのようです。出来上がった製材品は美しく、また、欠点のないクリア材は高値で取引きされるために、日本から多くの材木屋さんが米 ヒバを求めて、バンクーバーにやってきます。ピーク時に比べれば激減しましたが、材木屋さんたちは米ヒバ製材という大勝負に賭けを挑みます。大勝負?な ぜ、製材が大勝負なのでしょう?誰も、丸太の中身がどうなっているのか、わからないからです。知識と経験を頼りに丸太を買い付け、製材工場に製材を委託し その工程に立会い、希望通りの製品を作って日本に運び販売する、一連の流れの中で、多くの落とし穴が潜んでいます。
どの樹種でも同じですが、この米ヒバの製材には特に多くの落とし穴があります。少なくとも、私はそう感じています。
3月のプロジェクトでは、毎度ながら、丸太を製材工場に持ち込んで製材を委託して製品を作るのですが、米ヒ バの製材は、予想通りの結果が得られないことが多く、リスクを最小限に留めるべく、毎日、悩んでいるところです。ノコを入れてみたら、中身が全部腐ってい て使い物にならない、とか、ズタズタに割れている、形状変化の原因である’アテ’と呼ばれる欠点やら、ステインが酷くて価値が落ちる、とか。欠点を除去し て行くと、顧客が欲しいサイズや長さにならないで、結果的には安価な中国向け製品に作り変えなければならない、とか。廃棄しなければならない部分が多けれ ば、その分は、まるまる損ですし。
なんとか最大限の価値を見出して、今後も継続的に安定供給できるよう頑張ってみます。決して無駄にできない、貴重な天然資源ですから。