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087 「カナダと日本の建設プロジェクトの違い」 (2021年02月号)

昨年来のコロナ禍の中、建築・建設の世界も少なからず影響を受けています。建築現場でのソーシャルディスタンスの確保、ミーティングのリモート化等、様々な措置・工夫がなされ、影響を最小限に食い止めようと日々努力がされています。私の認識としては、以前と比べ遜色ないというわけではありませんが、かなり以前の姿に近づいてきていると感じています。
私はバンクーバーだけでなく、4、5年前より東京でのプロジェクトにも携わっていることもあり、バンクーバー及び日本のスタッフから、バンクーバーと日本での違いについてよく聞かれることがあります。その主な違いを下記にまとめてみました。

1.工事管理
バンクーバーでの建設工事の場合、主にファストトラック(実施設計図が未完の状態で工事を開始、進めていく)で行われ、CM (Construction Manager) 会社により施工管理がなされることが一般的です。一方日本では、実施設計図を基に一括請負契約にてゼネコンが施工管理することが多いです。これは、プロジェクトの進め方やプロジェクトファイナンス(事業融資)等が違うためです。
バンクーバーのコンドミニアムにおいて、開発許可発行後すぐにプリセールを行いますが、その時点では建築許可は未発出、実施設計図は未完成、事業融資も未取得の場合が一般的です。そのため開発業者は、CM 会社と契約の後、予算・工期を随時確認しながら、準備・解体工事等を開始し、建設許可取得、実施設計図完成、融資取得するなど、事業を同時進行的に進めていく必要あります。日本でもプリセールはしますが、リスク軽減のため、工事開始前には実施設計図の完成は必須なのが一般的です。

2.工事費
日本ではよく坪単価、カナダでは $ per s.f.(1 square foot あたり金額 ) をなどを指標として使います。工事費は各物件によって大きく違い単純比較はむすがしいですが、同等の超高級コンドミニアムの場合、日本の単価の方が2倍程度高いのが私の近々の実感です。ただ、それらは単純に日本の工事金額が高く設定されているというわけではなく、工事習慣や規制による施工方法が大きく影響していると考えられます。

3.施工方法・品質管理・工期
バンクーバーにおいては工事車両が道路等にはみ出し、人・車の通行に影響することも多く、また仮囲いなどにしても、簡易的なものがほとんどです。一方日本においては、工事期間中はその影響を極力敷地外に出ないよう計画し、仮囲いにしても着工から竣工間際までほとんど動かさず、建設中建物を完全に覆うことも普通です。これは主に役所や労働基準局の規制の違いに要因があります。そのような諸条件ため、敷地外に出られない上に自分の足元を掘削し続ける日本の地下工事などは、非常に難易度が高く、その事前工事計画は非常に複雑・広範囲、そして工事の精緻な実効性が求められます。結果として日本のゼネコンの現場事務所では2倍近くもの人が働いていることも見かけます。

いろいろ他にも違いがありますが、大項目に相違を記しました。これらの違いは日本とカナダの文化や慣習の違いによるところが大きく、どちらが良いとか悪いとかということではありませんので、その旨ご理解ください。