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104「エアコン – バンクーバーでも必須電気製品に!?」(2022年07月号)
By 高久 英輔 (Eisuke Takahisa), Synergy Semiochemicals Corporation
去年の猛暑は酷かったですね。会社でいつもエアコン設定 18 °Cのカナダ人たちは相当困っていたようで、夜の気温が 20 °C以上あったから寝られなかった、とやつれていた同僚がいましたし、中にはパティオで寝た、というツワモノも。僕が子供のころ (80 年代 ) のバンクーバーの夏はこんなに暑くなく、一般家庭でエアコンなど見たこともありませんでした。しかし、今はポータブル型を中心に売れているようです。
ただ、このポータブル型、能率が余り良くありません。どうしてかというと、エアコンは、冷気を作るときに発生した熱を、屋外に捨てる仕組みですが、ポータブル型は多くの場合、冷房中の部屋の空気を吸い込んで、それに使ってしまうからです。せっかく冷やした部屋の空気を、熱の捨て先に浪費してしまうのですね。これでは効率が良いわけがない。そこで、値段は高いですが、熱を捨てるための空気を、外から取り入れるタイプがお勧めです。これは日本のエアコンに近く、既に猛暑状態の外気にさらに熱を押し付けることができ、それで得た冷たさを、既に冷えている屋内の空気の冷却に使うので、効率が良くなるのです。また無駄に頑張らなくて済む分、静かになることも期待できます。ポータブル型は、日本でいう「室外機」が部屋にあるのと同じなので騒音は考慮点になります。
持ち家で大掛かりな工事が可能な方の場合、日本タイプのエアコンを設置する人もいるのではないでしょうか。エアコンは冬の暖房にも使えますので、こんどは冬の話を。仕組みは夏の逆で、しんしんと冷えたカナダの外気を吸い込み、そこから更に熱を奪い取ってしまうのです。冬の外気は大変冷たいですが、エアコンの冷媒にとってはまだまだ熱が回収できる対象なのです。そうやって外から奪い取った熱を、屋内の空気を温めるために使う、というわけです。
我が家のように古いアパートや家の場合、温水ラジエーターが現役ですが、築浅の家やコンドでは、いわゆるベースボードヒーターという電気ヒーターが設置してあることが多いですね。また、オイル充填のポーターブルヒーターを使っている人も多いでしょう。しかし、いくら電気単価が日本の半分以下とはいえ、冬の電気代には響きますね。ベースヒーターやオイルヒーターは、電気を意図的に、全部無駄にする( 熱損失させる ) だけの原始的メカですからしょうがないのです。その点、エアコンは電気で圧縮機を動かし、冷媒を凝縮させ、次いで蒸発させることで熱を出入りさせているわけで、冷たさや温かさの「おおもと」は周囲や外の空気なのです。つまり機械自体が直接熱を出しているわけではない ( もちろん多少の熱損失はありますが )。実際、消費した電気エネルギーの何倍もの熱を出し入れできます。まさに thin air から有用な冷熱を絞ってくれる魔法のマシン。これはもう、ベースヒーターやオイルヒーターとは次元の違うエリートぶり。冬の電気代が大変という方は、この意味でもちゃんとしたエアコンを検討されると良いでしょう。