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001 「家と敷地との関係(その1)」(2013年9月号)

今回、住宅の大まかな部分、家と敷地の関係についてお話します。家と敷地の関係というのは、家をデザインする上で 建築家が第一に考えるとても重要なものです。建物の配置は近隣の建物、道、自然環境と密接に関係し、それらに大きく影響を受けます。普段皆さんも意識した 事はないにせよ、日々の生活の中で自然と肌で感じることがあるでしょう。

一つ” バンクーバースペシャル” を例にあげます。” バンクーバースペシャル” とは、一昔前の二階建て住宅のスタンダードタイプの物で、道一列に何軒も同じような住宅が並んだ光景を皆さんも目にして事があると思います。それは非常に 素っ気なく、”スペシャル” とは元々少し皮肉を込めて付けられたのですが、最近はそのシンプルさと合理性が見直されています。

バンクーバーでは、山を見ればそれが北であることが分かるように、日本では公団住宅のベランダを見ればそれ が南であると友達に教えられた事があります。全部が全部そうであるとは言えないにしろ、理屈としてはあっている。日本では南向きに開口部をおく事で日光を 部屋に取り込みやすくすることができるからです。ベランダは単なる物干し場としての役割だけではなく、建物から出っ張ることで、冬は傾斜の低い日光は取り 入れ、夏は直射日光による太陽熱を防ぐ役目も果たします。この様ににうまく太陽を取り込むには、デザインはもちろん、周りの建物との位置関係が大切であ り、だから一昔前の団地は日本各地で似たような風貌で同じようなレイアウトで建てられたのです。太陽の動きが一つの物差しとして使われたと考えられます。

同じ北半球に位置するカナダでも同じ効果が図れます。バンクーバーの敷地は、北と南に開いてるものが多く、 そのため日本の団地同様、太陽の動きを視野に入れた家造りがしやすいのです。バンクーバースペシャルは一番大きい開口部を南に面してるのが多く、リビング がそこに設けられています。そのリビングは大抵二階にあり、ダイニングスと繋がり家の端から端〔北と南〕へ渡る開放的なスペースとなっています。

一つ公団住宅と異なる点を上げると、家は道路に面してるという事です。敷地が道路の北側にあるのと南側にあ るのとで、入り口の位置が変わり、それによって部屋の配置にも影響が及びます。北側にある家は勿論玄関が南になり、その場合リビングを南に向けたプランが 難しくなる。玄関を家の中心に置いた場合、ドアを開けたらいきなりリビングに入る事になります。そこで、玄関の位置をずらすと無駄な廊下ができ階段の位置 も難しくなる。こういったシナリオを試した上で、現在の形にたどりついたのかは確かではないですが、北と南向きの敷地両方に対応出きるのプランが出来たの は、二階にリビングスペースを設けたからだと考えられます。そして、こういったデザインにした事によって他にも利点が生まれてきます。一つは、先程述べ た、リビング、ダイニングの連立したスペースが出きる事により、風通しのすぐれた、周辺環境又は季節を感じさせてくれる空間が出きる事です。

この先の詳細は次回に続けさせて頂きたいと思います。

 

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