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004 「変化するSuburban Housing(郊外型住宅)」(2013年12月号)

最近、ニューヨークに住む妹夫婦の家を訪ねた。彼らは子供が出来たのを機に、郊外のロングアイランドに引っ越したばかりで、私もニューヨークの Suburb(郊外)は初めてだった。車に乗りながら近所を見渡すと大都会ニューヨークに着いたというよりか、何処か見慣れた風景の場所に着いた感じがし た。道路、前庭、ドライブウェイ、そして玄関までの道。そこまではバンクーバーでよく見る家と似ているが、しかし家の裏庭に出てみると塀が全く無い。よく 見ると塀がある家は一軒も無く、所々に木が立っているだけである。それぞれの家の庭が丸見えで、個々の庭というよりか、ひとつの長いグリーンスペース又は パークが続いてるように見えた。今まで見てきた住宅街とはまったく印象が異なり、自分の郊外住宅に対する固定観念が覆るような出来事だった。妹に聞くと、 ニューヨークの郊外では家の敷地の周りに塀を建てないのは普通とのことだ。

カナダのウィニペグ市に1946-47年に開発されたWildwood Parkというコミュニティーがあるが、そこは妹夫婦の家同様、複数の家が一つのグリーンスペースを共有するデザインとなっている。しかし裏庭ではなく、 玄関のある前庭がそのグリーンスペースに面している。それは、ニュージャージ市で開発されたRadburn Design が元になっていて、自動車と歩行者の動線を分ける仕組みとなっているのが特徴である。道路がある方が裏庭になっていて、前庭がある方には自然の中に続く歩 道や子供の為の遊具等が設置された共有スペースがある。そこから各家の玄関へと繋がる道が伸びている。ロングアイランドで発見した裏庭の長いグリーンス ペースはこの共有スペースの名残であると思われる。

Radburn Design とは、自動車が普及し始めた頃に開発された都市によく見られるグリッド(碁盤の目)型と対照的に動線と敷地の並びが自然を意識した流線型になっているのが 特徴である。近年では、北米のSuburban Design の原型とも言われ、Suburban と言えば一緒くたに同じ様な住宅街を想像しがちだが、妹の住むロングアイランドにしても、メトロバンクーバーの、バンクーバー、リッチモンド、バーナー ビーと各地域を周って見ると、Suburb でも地域によって独特な雰囲気がある事が分かる。

リッチモンドを訪れた人がよくアメリカに似ていると言うのは、Radburn Design の要素が残っているからであろう。しかし自動車の普及と実用性により玄関は道路側に移り、国際化や少子高齢化の影響により住民の分布の変化を遂げ、それに 伴い共有だったグリーンスペースは区分された。このように時代、地域、そして各々のコミューニティーに応じてSuburb の変化がみられる。今回の旅を通じて、これからも変化していくだろうと思われるSuburban Housing の途中経過が見られた気がする。

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