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056「日本の住宅に、カナダの木材が使われている。」(2018年4月号)

カナダは良質な米松の産地です。とは言っても日本で言う赤松、黒松、とは違い、ダグラスファーと言い、トガサワラに属しています。(Douglas-Fir)

米松は日本の住宅構造を司る梁、桁、根太、筋交いなどに利用されたり、最近は構造用合板(Plywood)の素材としても利用されます。明治以降から日本への輸入が始まり、戦後輸入が増加した米松は、日本の松の代用品として建築に無くてはならない存在となっています。

生育場所は北米西海岸部で、米Oregon州~BC州南部(北限はバンクーバー島北部辺り)。BC州の米松は年輪が詰んでいて強度が有るとして日本で喜ばれます。しかし、生育が遅いから年輪が詰んでいる訳で、逆に南部に比べると厳しい自然条件(生育条件)でも有るということです。

カナダから日本への丸太搬送は、専ら大型バルク船で海を渡り運ばれます。1回の搬送量はおよそ35,000m3。丸太は日本の港で荷揚げされ、製材工場、合板工場→加工&製品化→住宅メーカー、プレカット工場直納入、或いは木材問屋を経由して大工さんに届けられるなど、主要製品だけとって見ても裾野の広いマーケットです。私はその一連の商流のほぼ源流地点、このカナダで丸太購入を生業としております。

丸太を購入する前には、それが購入にふさわしい品質か否かを見極める為、実際に丸太を見る作業をします。丸太は山から切り出されて販売準備がなされると、筏を組んでFraser Riverに留め置かれます。川は私にとって商品がいっぱい並んでいる、いわばスーパーマーケットということになります。皆さんも川で丸太筏が幾つも留め置かれたり、ボートで曳航されているのを見掛けたことが有るかと思います。検品作業では、立ち木を林地まで見に行きもしますが、その多くは川で行います。モーターボートを貸し切ってお目当ての筏まで渡り、スパイク付き長靴で筏の上を歩き回って品質を確認するのです。これ、慣れてないと足を踏み外して水中に“ジャボン”と落ち、「助けてー!!」となってしまいます。

丸太検品のポイントは色々有りますが、前出した一般住宅用建築部材の採取を目的とした丸太の場合は、①丸太が通直であるか ②捻れていないか ③節は小さいか(枝が生えていた箇所は製材すると製品に節が現れるので、なるべく少なくて小さい方が好ましい)④腐っていないか ⑤筏から丸太が抜け漏れていないか、などです。

寒い冬も、暑い夏もこの検品作業は休むことなく続きます。 しかし、川から眺める町並み、筏の上で日向ぼっこするアザラシ、ボートに当たりそうなくらいジャンプする遡上中のサーモン、梢の上でその魚を狙う白頭ワシなどを見る機会も多々有り、カナダの自然の雄大さを楽しむひと時でも有ります。