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077 「適材適所、BC州産針葉樹のお話」 (2020年03月号)
By 植田秀至 (Shuji Ueda), CARL WOOD lumber limited
適材適所(てきざいてきしょ)は「人の能力・特性などを正しく評価して、ふさわしい地位・仕事につけること」を表す四字熟語だが、伝統的な日本家屋や寺社などの建築現場での木材の使い分けがその語源である。すなわち“適材適所” の材とは木材の材を意味する。豊富な森林に囲まれた日本では、針葉樹・広葉樹など実にさまざまな木材が建築に使われてきた歴史がある。建物を支える柱や梁などにも、実に適切で理にかなった使い分けがなされてきた。例えば土台には腐りにくく耐久性の高い檜( ヒノキ) や栗(クリ)を、内装の一部になる柱には木目の美しくやさしい肌合いの杉(スギ)を、また屋根や二階以上の重量を支える梁には強靭な松(マツ)、また、家具であるたんすには桐(キリ)が最適とされるといった具合である。
ここBC 州は世界的な木材産出国であり、日本と同じように様々な樹種が生息している。そして現在でも日本へ相当量の木材が輸出されており、適材適所に使用されている。
Yellow Cedar( 米ヒバ) は、日本の桧や栗と同様に防蟻性が高く、腐り難く、耐久性が高いことから、住宅の土台や鉄道の枕木などに使用される。Western Red Cedar( 米杉) もまた防蟻性が高く腐り難く、加工が容易なことから、外構材としてデッキやフェンスなどに使用される。Sitka Spruce( カナダ桧) は、通直で粗利曲がりが少なく、白木の好まれる日本では、和室周りの建具として好まれる。また楽器用としてギターやピアノの部材としても使用される。Douglas Fir は、強度が強く住宅の梁や桁など構造材として使用される。Balsam FirやWestern White Spruceは、白く柔らかく加工性が良いので、仏事の塔婆、護摩木、木札、その他様々な木工品の原料として使用される。
このようにその樹の特性を知り、使い分けることによって、古くから適材適所が、我々が気付かぬところで実践されているのだ。我々木材業界や建築関係のお仕事をされている方々には至極当然のことではあるが、毎日過ごしている我が家にはどんな樹が使われてるのだろう? 観光で訪れたお寺などの木造建築物は? この楽器には? 我々の周りには、沢山の適材適所が生かされており、そんなことを考えながら改めて、物事を見てみると、何だか楽しくなってくるのではないだろうか。