記事・出版物 Articles & Publications リストへ戻る
093「第3次ウッドショックと日本の購買力低下」(2021年08月号)
By 植田 秀至 (Hideki Ueda), CarlWood Lumber Limited
現在日本では木材が供給不足に陥り、価格が高騰する “第三次ウッドショック” に住宅業界が震撼しています。2021 年3月ごろに影響が顕在化し、その後は悪化の一途をたどっています。殆どの木材製品で昨年比2倍以上の価格になり、多くのプレカット工場が新規受注の制限を掛けており、なかには基礎工事だけを終えた建築中の工事現場でも木材が入手できずストップしたままとなっています。
ちなみに、第一次ウッドショックは、1990 年のバブル崩壊前で、住宅が 1 年間で 170 万戸建った年です。この 1990 年も全く住宅の材料が不足して、家を建てればすぐに売れるという年でした。しかし、1991 年、バブル崩壊と共に次年度は、137 万戸まで一気に着工数が落ち込んでいます。又、第2次ウッドショックは、2006 年で、やはり着工数が近年にない 129 万戸建っております。そして、第1次ウッドショック同様に次年 (2007 年 ) には、106 万戸まで落ち込んでおります。
現在起こっている第3次ウッドショックの原因を端的に言えば、北米や中国における木材需要の増大と供給不足で日本に輸入材が入って来なくなり、それにつられて国産材の需要も増え入手困難になるという状況です。
もう少し突っ込んで理由を探ると、まず 1 つ目の原因は、北米でのコロナ禍によるステイケーションシンドロームとも言われる現象です。これはステイホーム、リモートワーク、超低金利住宅ローンが引き金となって、従来、外食、バケーション旅行、エンターテインメントなどに使っていたお金と時間を、自宅の改修、増築、郊外への移転、新築など住宅へと流用する人が急増したと言われる現象です。
次に2つ目の原因として、中国の木材需要の増大です。元々著しい経済成長を背景に木材需要が増大していましたが、コロナ禍で減速した経済成長をいち早く回復させたことから、富裕層や中間層の住宅熱が再燃し内需が活発に沸き起こっています。
3つ目の原因は、欧州からの供給減と言われています。欧州ではコロナ禍で減速した経済を立て直すために公共工事の発注を増やし木材需要が増大しています。また温暖化の影響でカナダでも問題になった松食い虫などの害虫が大量発生し多くの森林資源に甚大な影響を与えています。それに加え従来日本などへ輸出していた木材をより高い価格で購入する北米へとシフトし始めました。日本の製材業者でさえ、日本国内で販売するより、より高く売れる北米へ輸出する会社もあるようです。
このような理由により、日本へ海外産の木材製品が供給が極端に減っているのが第3次ウッドショックです。つまり日本は、品質基準が厳しく、価格が安いことから、日本よりも品質基準が緩く、高く買ってくれる北米や中国へ売った方が良い、という判断を下すのは、至って自然な流れなのです。
日本はバブル崩壊後長年続いているデフレ経済に浸かりきって世界での供給争奪戦に負けてしまっているのは非常に残念であり、カナダの木材を日本のお客様に販売している者にとっては、『日本よ、しっかりしろ!』と叱咤激励したくなる今日この頃です。