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010 「木材のあれこれ」(2014年6月号)

身近にありながら、疑問が多いのが木材です。ちょっとした疑問、その一部を解いてみましょう。

1) SPF

バンクーバー近郊のホームセンターに木材を買いに行くと、目にするのは、SPFという材質の木材。これはスプルース(S)、パイン(P)、ファー(F)の 云わば混合の樹種です。SPFという樹種はありません。混生しているために、いちいち面倒なので、分けていないということです。主に、BC州の内陸部から 出材します。バンクーバー周辺では、この材が住宅現場で非常に多く使われています。高層建築や工事現場でも、足場に使われたり、下地にも使われます。

2) 2 x 4

2掛ける4、ツーバイフォーです。一般にディメンション・ランバーと呼ばれています。ツーバーフォーという呼び方は、日本では、北米の SPF を使った住宅工法全般の呼び名だと思われがちです。実際には、2インチ掛ける4インチの寸法を意味しています。ところが、実際の寸法は全く違います。2イ ンチあるべきところは、1.5 インチしかありません。4インチは 3.5インチです。さらに2×10 の場合、10インチは、9.25インチしかありません。

棚を作ろうと思って、寸法を測ってそのつもりで木材を買ってきて、いざ使おうと思ったら、あれ?、足りない。

そもそも、カナダはメートル法を採用している国家なのに、木材業界には、インチやフィートのヤード・ポンド法が根付いています。メートル法を採用していな い、アメリカが最大のマーケットだからでしょうか。2x4x8 と書いてあったら、2インチ(実寸1.5 インチ)x 4インチ(実寸3.5インチ)x 8フィート(実寸は、若干、8フィートよりも長い) という意味です。

ホームセンターでは、一枚いくら、という売り方なので、寸法さえ間違えなければ問題ないのですが、業界で取引される場合には、さらに面倒なFBM という単位が用いられています。複雑なので、説明は省きます。

3) メートル法とカナダの沿岸製材

BC州内陸部で生産されるSPFディメンション・ランバーについては、最大のマーケットはアメリカです。SPFディメンション・ランバーが持ち込まれた当 時、日本には従来の尺貫法が残る中でメートル法を採用していました。わざわざ小さな日本のマーケットのために、13尺2寸とか4mを、作ってくれる工場は ありませんでした。北米の流儀に合わせるしかなかったのでしょう。今でも、SPFディメンションランバーは、日本国内では、北米の寸法を日本サイズに調整 して使われています。

これに対して、沿岸製材(バンクーバー近郊やバンクーバー島の製材工場)では、日本向けにヘムロック、ダグ ラスファーなどの樹種が製品に加工されて出荷されますが、現在、そのほとんどが、メートル法で生産されています。たとえば、4-1/8 インチが、3寸5分、あるいは105mm です。最盛期に比べて激減したとは言え、まだ、莫大な量の 105mmx105mm x 4m という定番のアイテムが日本向けに出荷されています。主に、日本で家屋の構造材に用いられます。こちらは、105mmを 4-1/8 インチと表記する方法が廃れて、むしろ、105mm という表記が主流になっています。

近年、ヨーロッパ材が日本の住宅需要を大いに賄っています。ヨーロッパ材は、もともとメートル法で作られていますので、後発ながら、一部の用途で日本の マーケットで北米材を駆逐してしまいました。沿岸製材では、これがメートル法を積極的に採用する一因となった、というのも事実です。