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039 「知っておいた方がいい電磁波の話(2)」(2016年11月号)

fraser_article_039_article_new前回は身の回りにある電磁波には高周波と低周波があるというお話をしました。高周波は携帯電話やWifi、スマートメーターなど目的をもって利用されている電磁波であり、現代社会において避けて生活するのは難しいものです。そこで今回は住宅で使う電気の、ありがたくない副産物として発生する低周波についてお話します。

新しく引っ越してきた住宅やアパートで急に体調を崩したという経験がある方もおられるのではないでしょうか?新築であればまず疑うのは建築材料から発生する化学物質による体調異常です。1980年代から90年代の建築物には化学物質を含む新建材が多く使われ、住宅の気密性も上がってきたことからシックハウスが大きな問題となりましたが、現在では使用建材の厳しい規制と換気の徹底などから問題は減少してきました。化学物質の問題がないのになぜか引っ越し前にくらべて体調がよくないという場合は、電磁波を疑ってみる必要があるかもしれません。

低周波は波長が長いため電場と磁場に分かれて存在し、それぞれの性質の違いから人体に与える影響とそれを防ぐ(避ける)ための対策も異なります。日本には電磁波測定士という資格がありますが、その役割は住まいの身の回りにある低周波を測定して、それに対する対策を施すことです。

「電場」は人の身体の表面に帯電して自律神経の調整機能や、特に電気的な影響を受けやすい神経、皮膚、目、睾丸などに影響を与えると言われています。電場は測定器で測ることがことができ、25V/m以下なら影響ないだろうという基準があります。日本のパソコンはアースされてないので、キーボードに触れている人にはLED電球を点灯させることができるくらいの電気が帯電しています。ただし電場はアースをしっかり取ることで対策ができますので、アース付きの電源を使っている北米では、日本ほどの問題はありません。また日本製パソコンでもノートブック型のものをバッテリーで使っている場合は帯電する心配はありません。

「磁場」による身体的影響としては、免疫力の低下、活性酸素の発生、遺伝子損傷、白血病のリスクなどが指摘されています。こちらは距離を取ることである程度対策ができますので、高圧電線からは離れるとか、家庭内で磁場が発生する電子レンジやIHクッキングストーブなど使用中はできるだけ距離を取り、短時間で済ませるということが大切です。距離を取ることが難しく長時間使用することが多い電気毛布やホットカーペットを使っている方は注意してください。温めておいて使用するときにはスイッチを切り、さらに電源を抜くのがベストです。スイッチをオフにすると電流は流れないので磁場は発生していませんが、電源からの電圧で電場は発生し続けています。

疫学研究により電磁波過敏症という電磁波に影響を受けやすい体質の人は5~10%いると言われています。室内配線による電場や電気製品からの磁場の問題は対策を施すことができますので、必要以上に心配しないようにして、どうしても心配な場合は専門家に相談しましょう。もしおかしいと思ったら家のブレーカを1日下してみてください。家じゅうの空気感が変わってよく眠れるかもしれません。

吉武政治  2級電磁波測定士(日本)