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071「ニューデンバーに見るハウジング・タイポロジー」(2019年7, 8, 9月号)

昨年の早春にスティーブストン日系記念庭園の仕事の関係で戦時中の日系人強制収容所だった場所を家族で訪れた。その中でもニューデンバー日系収容メモリアルセンターに当時の日系人が住んでいた小屋が再現されており、当時の生活環境に関する資料も保存されているという話を聞き、私の旅行の日程に合わせてセンター館員のアマンダ・マーフィー氏に無理やり休館日にセンターを紹介して頂くことになった。

現在、ニューデンバーは自然豊かなBC州内陸部にある人口500人ほどの村である。戦時中、ニューデンバー周辺にはローズベリー、サンドン、スローカン、ベイファーム、ポップオフ、レモンクリーク、カスロ等の日系人強制収容所が密集していて、その中でもニューデンバーは千人以上の日系人を収容、日系人強制収容所を管理していたBC保安委員会の行政センターや日系人の結核治療施設があった事もあり、強制収容所の中でも重要な役割を果していた。(*1、3)

そこは、日系人が強制収容される以前は近郊の旧鉱山で働く抗夫が住む村であったが、送り込まれた日系人には住む場所もなく、テントで生活しながら自分達の小屋を建てていったということである。(写真*2)建材は主に乾燥してない生木とタール紙で、断熱材もなく冬になると家のなかに氷柱ができるほど寒かったそうである。もちろん、トイレや風呂もなく共有しなければならなかったのである。(*3)

センターには当時の住居が3軒保存してある。1軒はビジターセンター・事務所として改装され、残りの2軒は大きく分けて2期に渡る戦時中の建材、間取り、生活用品がそのまま保存されている。1期目は1942-43年頃、最初に強制送還された日系人が建設し、住んでいた小屋で、断熱材も天井もなく、生木が乾いてできた隙間が現れている。2期目はあまり知られていないが戦後直後ニューデンバーだけが唯一運営されていた強制収容所であった。高齢のため引越しできなかったり、家族が結核治療施設で働いていたり、地元で仕事を持っていたりした場合には強制収容所に残ることが許された。この状況は1957年まで続いた。小屋は1942年初めから秋にかけて強制移動された日系人、主に男性収容者によって建設された。元々造船業についていたスティーブストン出身の日系人が造船の技術を生かし、小屋の建築を指揮したとの事である。にもかかわらず、限られた資材と建築未経験者、そして短期間の造成によるものとは思えない正確な施工である。(*3)

センターでのツアーの前に少し時間があったので、オーチャードと呼ばれる旧日系人収容地区をうろうろしている時に不思議な事に気付いた。多くの家がほとんど同じ寸法なのである。家の外装は様々で、木造のシンプルなものから、モダンなものとなんでもありなのだがすべて同じ大きさなのである。マーフィー氏に尋ねると、1951年まで小屋に住んでいた日系人は土地を所有することが許可された為、多くの元強制収容者はそのまま同じ小屋に住み続ける事を選んだ。当時少なくとも70家族は住み続けていたと思われる。小屋の改装は元々の日系人が様々な理由により引越しを始めた頃に始まったと思われる。(写真3)

1980年代半ばにアメリカから移住し、改装した小屋に現在も住んでおられる元村長のギャリー・ライト氏によると、60年代から70年代にかけて、多くの小屋が改装されたそうだ。しかし、この非常にユニークな街並みもこのまま何の保存もされなければいずれはなくなってしまうであろうとの事であった。地元の人がニューデンバーの日系人の歴史についてどのような考えを持っているのか伺うと、「もちろん地元民は日系人は真珠湾攻撃後、カナダ政府によって不当に扱われたと思っている。同時に戦後に元強制収容者であった日系人のセンヤ・モリがニューデンバーの村長に選ばれた事を誇りに思っている」との事であった。(*4)

ニューデンバー日系収容メモリアルセンターは1994年に開館したが日系人強制収容の時代の記念としては始めてのプロジェクトであって、さらにカナダ国立史跡としても指定された。オーチャード地区は国立史跡ではないが、センターとしては観光客が日系人の痛ましい歴史を実際にタンジブル・エビデンス(有形形跡)として経験できるユニークで重要な歴史保存プロジェクトであるとの見解を持っている。日系人の小屋の発展は偶然起こったものなのである。2017年は日系人が強制収容されて75周年であった事もあり、スティーブストン日系記念庭園やハイウェイ・レガシーサイン・プロジェクトを含め日系コミュニティーによる様々なメモリアルプロジェクトが行われた。過酷な日系人の記憶が時と共に忘れられないように、これからの世代に語り継いでいける事を願った多くのプロジェクトの中で、自然発生的ではあるが地域と共生し、時代の変化に合わせて発展したニューデンバー村にはまた違った形での日系コミュニティーの歴史継承の事例として学ぶことも多いのではと思う。

*1 John Greenway, Linda Kawamoto Reid, Fumiko Greenway, 2017: Departures – chronicling the expulsion of the Japanese Canadians from the West Coast, Burnaby, Nikkei National Museum
*2 Linda Kawamoto Reid, Beth Carter, 2016: Karizumai – A Guide to Japanese Canadian Internment Sites, Burnaby, Nikkei National Museum
*3 Personal and Email Interview with Amanda Murphy, 2018 and 2019: New Denver, The Nikkei Internment Memorial Centre
*4 Phone and Email Interview with Gary Wright, 2019

Photo: Library and Archives Canada

Photo: Library and Archives Canada

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