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081 「林業の役割 – 二酸化炭素固定化と樹齢の関係」 (2020年07月号)

森に生えている樹々が二酸化炭素と太陽光により光合成をし、二酸化炭素をその木自身の中に固定化することにより、私たちが日々排出している二酸化炭素の量を減らしてくれていることはご存じだろう。しかし、様々な樹種、地域、天候によりその二酸化炭素を吸収し固定する能力には差が生じてくることはあまり知られていないと思う。
樹の乾燥重量( 水分を全て抜いた場合の重量) の約半分は光合成によって固定された炭素の重量だと言われている。細く背の低い若い樹は、その重量自体が少ないため二酸化炭素固定量もさほど多くはない。20~30 年とある程度の大きさに育ってくると二酸化炭素固定量もどんどん増えてくる。ただし60 年、70 年と経過するとその成長がスローになり、二酸化炭素固定量が減ってくる。
この二酸化炭素固定化の仕組みはこうだ。
樹は二酸化炭素を吸収し光合成をし、自身の成長のために、その樹自身の中に二酸化炭素を固定する。ただし、人間や他の生物と同じように、木も二酸化炭素を排出する。その二酸化炭素の吸収量と排出量の差が、二酸化炭素固定量であり、その樹によって、我々が排出した二酸化炭素が削減された量に相当する。
また人間や他の生物と同様に、老木化してくると、光合成の能力が落ち二酸化炭素の固定量は減るが、その樹の大きさ相当のもの排出量は変わらず、つまり 固定量 - 排出量 = 削減量の方程式に当てはめると、削減量が少なくなってくるというわけだ。
木材会社がそのことを考えて森を伐採しているわけではないと思うが、ある程度大きく成長した( 老化した) 樹を伐採し、経済活動へ利用することは、環境保全にとっても重要な役割を果たしていることになる。勿論、伐採後には伐採前と同量の森林に戻すために、植樹することが必須となるが、世界最大規模の森林面積を保有するカナダ、特に、そのカナダの森林面積の6 割近くを占めるBC 州に於いては、政府により非常に厳しい森林管理がされており、森林面積減少率はほぼゼロと言われています。我々の暮らすBC 州には、地球の環境を守るために非常に重要な役割を果たしている膨大な面積の森林が残されており、地域の主要産業である林業という経済活動を通しながら、二酸化炭素を削減する最大公約数化につながっている。そんな大切なことに携わる仕事が出来ていることに、心の中でこっそりドヤ顔してる今日この頃です( 笑)