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085 「森の恵み」 (2020年12月号)

森の恵みについて考えてみた。
「森の恵み」と聞いて想像するのは、山菜やキノコ(松茸など)。それとも、野生動物から得られるジビエ (ゲーム) などの鳥獣肉でしょうか?
私が思い浮かべるのは、木々が光合成によって二酸化炭素を吸収し、代わりに酸素を空気中に放つということ。これは広く知られており皆さんもご存知かと思います。
吸収された二酸化炭素は樹木内部に固定され朽ち果てるか燃えるなどするまでは空気中に放出されせん。針葉樹でこの吸収量が多いのは一般的に樹齢11~40年の若齢段階。広葉樹は針葉樹に比べ吸収量が低く樹齢による吸収量の起伏があまり無い様です。
木を育て、それを一定期間を過ぎたら伐採、製材し木材を採取する。一般建築用部材になる針葉樹林の業経営とそのサイクルは、二酸化炭素の吸収に効率的といえます。
また、森林土壌による治水機能もその一つ。山で降った雨が地表から地面に浸透し、それが長い時間を掛けて流れ出す。雨がそのまま一時に流れ出せば洪水になるところを、治水機能で時間差が付きそれを防いでいる。
また、地面に浸透する過程で水が浄化されると共に、水に大切な栄養分を与える。この栄養は、海に流れ出し植物性プランクトンの養分となり、動物性プランクトンがそれを食べ、今度はそれが魚の餌になり、、、、と食物連鎖が活発な豊かな海を育む。一見関係の無いように思えることですが、これも森の恵みを海が受けているということになります。
この様に、森は自然界に様々な恵みを与える物であることが分かります。
先にも触れましたが、住宅・建築業界も森の恵みの恩恵を受けています。それは立木から木材を採取し、それを利用させて貰っていることです。
木は、切り倒されてからは二酸化炭素吸収を行いません。しかし木材は内部でそれをしっかりと固定していますから、少なからず地球温暖化防止に繋がっているということになります。
針葉樹の老齢林は、若年林よりも二酸化炭素の吸収量が減少します。ですから一定期間を過ぎたら伐採をしてそれを有効活用し、伐採跡地に新たに木を植えて管理するとまた新たに二酸化炭素をいっぱい吸収してくれる。管理された山林は下草が生える機会を与え、地表の荒廃を防ぎますが、放置してしまった山林は下草も生えず荒廃、土砂が雨と共に流失してしまいます。
木材の積極的な利用、林業の活性化は豊かな森を作ると共に皆さん、それから皆さんの子孫のこれからの生活にとって大切な役割を果たしているのだと感じています。
コロナにより人々は右往左往しておりますが、森は、自然は、普段通り静かに時を重ね、見えないところで我々の生活を支えてくれているように思います。